ありをりはべり

日常のひきこもごも

アイデンティティ

ロックが好きです。


そんなことをいうと、大抵の人に意外だという顔をされる。
本が苦手です、と答えるときも一緒。
落ち着きがなくていつも焦ってるんですと打ち明けても。



以前はずいぶん、周囲からの「こういうはずでしょ」像に左右されていて

音楽の趣味を聞かれてもそれとなく濁して、

カラオケでは、いきものがかりだとかaikoとか、全くわからないのにわざわざ予習して歌ったり

本心ではそこまで惹かれてもいない本をなんとなく買ってみたり

落ち着いてるふうを装ってみたり
いいこちゃんでいようと、したり。

ほんとうのじぶんってなんだっけみたいな
思春期のときのような、いやもしかしたらそれ以上にアイデンティティについて悩んでいたかもしれない
なんだかちぐはぐな毎日を過ごしていた。


本当はたまには甲本ヒロトを思い切り歌いたくて
本が苦手で漫画がすきで
計画性がなくて適当でぎりぎりになって焦るのが、私で。


友人にはすこしずつ仲良くなってゆく課程のなかで
そういう本当のじぶん、をさらけ出していった。

みんな最初は驚くけれど、
たまに、なんかそんな気もしてたよーなんていわれたり。
やっぱり好きなことを話してるときはきらきらしているねと笑ってくれたりして。

特にライブなんかで、自分が好きなバンドを同じようにすきでいる人たちとわーわーと騒いでいると
もうなんだか好きなものを好きと言わずに我慢していた時間が、とても勿体ないものだったということに気づかされて
そのたびに、やさしく胸を打たれていた。

ちぐはぐな毎日のなかで
すこしずつ垣間見せて行く自分らしさ

次第に優しくうけいれてもらえるようになって
好きなものを好きだと、口に出して語るなかで

そのときどきで出会う
「あれ、案外こういうかんじなのね」とちょっと呆気にとられる、幸せな時間。

「こういう人じゃなきゃ」
って別に義務でもないそんなことを必死に守ろうとして

まるでそうじゃなきゃ嫌われちゃうかも、みたいに怖がっていた自分

あれはなんだったのかしら、なんてふと思い出せる今日この頃。


いま、わたしの車内でのBGMはチョモランマトマトで、
愛読書は就職難で喘ぐ女子大生が主人公のシュールな少女漫画で
数キロ目的地を過ぎたあとに迷っていることに気づく方向音痴ぶりを、タイムリーに発揮しているところだ。


おもえば人に嫌われることを極端に怖がるようになったのは
過去の思いでのあれこれかもと。思い当たるふしはあるけれど
それはもう過去の産物。

どこからが始まりで終わりなのかわからない不安定な時間のなかでも
私は、新しいものを生産するチャンスをつねに握っているのになぁと
ふと思って、はっとする。


そういうあなたが嫌いだと言ってくれたのも
そのまんまで大丈夫なんだよと言ってくれたのも
そのとき本当に信じていた大切な人。

人がとても怖くなったときもあったけれど
私はやっぱり、人が好き。


私らしさは、いつも流れていく時間のなかにも、ふと立ち止まる一瞬のなかにもある。






大丈夫、という魔法のような言葉を抱いて
ゆっくりとすこしずつ、自分を打ち明けていけたらいいなと思っている。










最後に、大好きなシュリスペイロフのこの曲を。

https://www.youtube.com/watch?v=M1OZFOCcLbg&feature=youtube_gdata_player