赤いあいつと緑のあいつ。
相変わらずの湿気で蒸し暑い日が続いている。
げんなりしながらも、食材を調達しにスーパーへ向かう。店頭に並ぶトマト、ゴーヤー、おくら等等の色鮮やかなこと。人にとっては殺人的な日差しも、彼らにとっては栄養なのだなとあらためて思ったりする。
強い日差しを浴びる日々を過ごして、夏が来たのだ、と思う。
今日の昼ごはんは、知り合いのコーヒー屋さんの店主おすすめ「トマトとおくら入りのめんつゆでいただく素麺」
うまいうまいと言いながらあっという間に食べ終わる。野菜になって生まれ変わるとしたら、トマトやおくらも悪くない。そんななんの発展もなさそうな妄想を、冷たい素麺を嬉々としてすすりつつ浮かべる。
素麺に埋もれる氷がまとう、滑らかな光がきれいで、真っ赤なトマトのつるんとしたフォルムは、小さな滑り台みたい。視覚ですでに満たされる15分間。
そういえば小さいころに、自分が蟻だったらトマトの上を滑るのになぁなどと考えたことがあったと思い出す。
結局大きなところはなんにも変っていない、5歳の夏のわたしも、24歳の夏の私も。
カーテンが揺れて、セミの声が聞こえて
夏が来た、と思う。
生ぬるい風が吹く室内、コップに注いだ麦茶に浮かぶ氷が、またひとつぱきりと鳴いた。
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