ありをりはべり

日常のひきこもごも

回想

昨日、本棚を整理していたら、アルバムの中から成人式の時の写真が出てきた。

 

華やかな古典柄の振り袖を着て、ぎこちなく笑っている自分。式当日、この振り袖を着た時の気持ちを思い返しながら

その振り袖を縫った祖母のことを 思った。

 

今日は、私の祖母の話を書こうと思う。

 

 

 

 


東京生まれの母方の祖母は、当時にしては比較的裕福な家庭にうまれ育った。

そんな祖母は、実家が営んでいた下宿屋で、進学のために上京してきた祖父と知り合い、恋に落ちる。

 

当時は沖縄なんか立派な外国あつかい、しかも祖父は離島の生まれだったから、二人は交際を猛反対された。祖母が16のとき、塾講師をしていた祖父は仕事をやめて、祖母を連れて駆け落ちをした。


祖父と小さな島に移り住んだ祖母は、洋裁の師範をもっていたのを生かして水商売の女性たちのドレスを縫って生計をたてた。祖父の早すぎる死のあと、三人の子供を女でひとつで育てた。

元々人見知りの祖母は、独特な島の空気に溶け込むのが辛そうな場面が、多々あった。困ったように笑う姿を何度見たかわからない。

けれども、近所の子供たちや限られた親しい人と話すときには、いつも穏やかに笑っていた。
ささやかな人とのかかわりを、嬉しそうに話す姿がとても素敵だった。

私は祖母の家にいってはお菓子をたべて帰るだけの そんな孫だったけど…笑
祖母のことが本当に大好きだった。

 

私が島を出て学校に通い始め、二年が過ぎたころの夏、祖母は病に伏した。

年を越して春、もう長くないと家族へ伝えられた。

当時、成人式の為にと祖母が母のために縫った振り袖は、母が押し入れを整理していたときに見つけた。
汚れもほつれもあったけど、無理に頼んでわたしの成人式にも着せてもらうことになった。


迎えた成人の日

綺麗な着物ね。
おばあちゃんの手作りなんです。
そうなの、じゃあ今日は孫のこんな姿を見れて、おばあちゃんも喜ぶだろうね。
美容院で、気付けをしてくれたスタッフさんとの会話。


式のあいだ、袖の部分がひと針ひと針手縫いなのがわかって、こらえきれずに、泣いた。

祖母への成人の報告は、仏壇の前でだった。


祖母と祖父が東京でであって、母が生まれて
高校の同級生だった母と父が東京で偶然再会して、
恋をして、私が生まれた。

出会いはいろいろ。

かたちにのこるもの、のこらないもの、どれもかけがえのないもの

「こんな柄の振り袖、あのときは流行りじゃなくてね。着るのが恥ずかしかったのよ」
そういいながら

私がその振り袖をきたいと話したとき、涙ぐんで笑っていた母。

これからも色々なものに出会う。
色々なものを繋いでいく。
泣いたり、笑ったり、得たり失ったり、与えたりも、できたらいい。

 

夕暮れ迫る那覇の街は今日も騒がしい。休日は、一人で町をふらふらして飲んだり食べたりしてるよなんて言ったら、お嬢様だった祖母にしかられそうだ。そう思ったから、今日は家でご飯を食べることにした。

 

職場の帰りに、スーパーで食材を買う。そういえば祖母は、暑い日も寒いも、いつも同じスーパーに通っていた。

もともと体が丈夫でないのに、荷物を持つよと言ったらいつも笑顔で首を振っていた。結局私は一度も、祖母の荷物を持ったことがない。

 

辛いこともたくさんあっただろう人生を、あの細い体で耐え抜いてきた祖母。

偶然にも今日の夕暮れは、祖母が一番好きだと言っていた、ピンクと藍が交る夕暮れ。日が落ちるのをゆっくり眺めながら帰り道を歩いた。

 

 

明日、自分が生きていることを絶対に保証してくれるものなんて何一つない。日々仕事で沢山の人と向き合い、別れる中で、そう感じる。

 

これからどんな人に出会えるだろう、何を見ていけるだろう

 

少しだけ涼しくなってきた沖縄。

 

胸のうちは温かいまま、過ごしていけたらいい。

 

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